【2005年11月号】スポンテイニアスな人生は使われていなかった脳の新しい回路を拓く。

2005年11月号

スポンテイニアスな人生は
使われていなかった脳の新しい回路を拓く。


 トム・クルーズが、役者が演じるときになにが一番大切? と聞かれて、「スポンテイニアス」(spontaneous) であること、と答えている。英語のスポンテイニアスは、日本語にはない概念で、「恣意的なもの(意図的なもの)を加えないで、自然に、あるがままにしておく」というニュアンスを含んでいる。スポンテイニアス・ファイアーというと、山火事などの自然発火の意。スポンテイニアスは、アクターズスタジオの訓練のように、役柄の意識状態、感情的状態には入っているが、役者自身の意識状態はからっぽであり、マインドに恣意的演技(くさい演技)が入りこまない状態を指す。
これは私たち役者でないものも、人生の局面局面で、自分の脳波を「スポンテイニアス」なものに合わせることで、「いま、ここにいるちから」を最大限に発揮することができ、右脳的な超高速な全体把握も活性化されることを意味している。
先日、七田チャイルドアカデミーの七田先生とお話しする機会があって、私たちは、脳がもっている機能のごくごく一部の機能しか使っていない、ということに意を新たにした。いま使われていない脳の機能はしかも、初期の人類が使っていた古い脳の機能に近い。きわめて直感的な機能。デジタル技術のように分解していって、それらを組み立てて全部を把握する機能ではなく、統合しビジュアルで全体像を瞬時に把握するような機能。たとえば本を一字一句読むのではなく、フォトリーディングのように全体を超高速で瞬時に、論理ではないなにものかで、ビジュアル的に把握する能力だ。その特徴は「圧倒的な情報量の多さと超高速性」にある。私たちが直感で難題の解を得るとき、これが起きている。千分の一秒という瞬時にすべての鳥瞰図、すべての詳細、すべての時間的進行が一気に理解される。
七田先生のところでは、子供たちが使っているひとつの単語が書かれたカードを千枚集めてそれを声に出して端から覚えて音読するという訓練をしているという。通常、どんなにその読み切る時間を詰めても7分はかかるのだそうだ。ここまでが訓練で縮められる通常の脳の使い方。それを突破すると、なんと千枚の単語を28秒で音読する子がいるという。千の単語を28秒でいうと、音として聴いてるとウワーンとしか聞こえないらしいが、本人の頭のなかではちゃんと千の単語が発語されている。それは記憶ではない。七田先生によると右脳と左脳がつながった瞬間に発揮される能力であると。
聴覚刺激についてうかがっていたのだが、聴くという感覚器官はより脳と直結していて、脳を直接刺激する手段としてすぐれている。しかもみずから音を出す(音読・話す)ことがさらにこれを加速させるらしい。お経を百万遍唱えた空海が神通力(オールマイティな脳力の開花)をもつのも当然ということになる。
こうした脳の新しい回路がつながったときの状態は、最初に申し上げた「スポンテイニアス」な状態になっている。あたまのなかに夾雑物がなく、ハッカをなめたようにスーッとして無色透明な状態。すべての入力(環境からの刺激)に対して、自然な反応ができる状態。自然な反応の定義は、私たちのマインドにセットされている「自動反応」(思い込み・役に立たない信念によって反応が自動化されてしまった行動)が起こる世界から離れた意識状態のことである。それこそが「いまここにいる意識状態」、過去から自由な状態。合目的的ではない行動もとれる、遊びの状態にも入れる、という自由な状態だ。この状態では、いつでも上位のヒエラルキーから情報が降りて来ることができる。瞬時に全世界のあらゆるものと時間と空間を超えてつながれる。それは別に瞑想に入らなくても、訓練によって可能だ。七田先生や聴覚刺激研究の第一人者、傳田先生がおっしゃるように、聴覚による刺激で、脳の新回路が発動する可能性は極めて高い。訓練してみよう、日常のなかで。電車に乗っているときのたった3秒間、頭にハッカを入れて静謐な状態を保っている自分を、他の自分が観察してみてください。面白いですよ。
  喜多見 龍一


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