【2007年1月号】ミッチェル・メイの事業モデルは「スピリチュアリティ」を哲学にして成功した。

2007年1月

ミッチェル・メイの事業モデルは
「スピリチュアリティ」を哲学にして成功した。


2006年10月、ミッチェル・メイが初来日した。彼は、ピュア・シナジーという、めちゃくちゃ本物志向のオーガニック・サプリの生みの親として名高い。それは、数奇な運命を体験したメイ自身のからだや、あの心理学博士を捨てヒッピー・ムーブメントの師となったラム・ダスの晩年の病に至るまでを奇跡的に救い、米国や海外で名前が知られている。メイさんをホテルにカンヅメにして根掘り葉掘り聞いてみたい、と思ったのは、彼が「生き方」「哲学」としてのスピリチュアリティを非常に着地した形で「現実」に応用し、フツーの社会のなかで、「独自な価値観」として成立させたからだ。スピリチュアリティを哲学にした会社を社会的にも「成功させた」というところが、すごい。こうした良心と循環型のビジネスモデルで成功できる、というのが未来のよいケーススタディになる。
はっきりいってバリバリのヒッピーだった若いときの「モーゼ」(メイさんの当時のあだ名。当時の写真は・・・思った通りでした・・・)は、コミューンで野菜を植えたりしていたわけだ。メイさんは、31歳のある日、ワーゲン・バンの助手席に座っていた。そして斜めにつっこんできた対向車に激しく衝突。他の乗員は無傷だったのに、彼だけが骨が形もなく砕け、一部の骨は最後まで見つからないほどの重症を負う。このとき、たぶん、天使が空から魔法の棒を振って、そのスパンコールに触れた彼は人生がまったく変わってしまったのだ。自宅のキッチンで植物の葉をすりつぶしたりしながら、細々と、しかし最初っから本物の、名前などなかったであろうその粉末を、自分と近しい身の回りのひとたちだけに配っていった。金銭のやりとりはなかった。それがいまや、世界的に、本物・自然・オーガニックなサプリという独自な位置を築いて大成功した。合成ビタミンCではない天然のビタミンCを得るために、彼はアマゾン地域に400名の雇用を生み出した。電力は風力起源のもの。錠剤ビンの上部に使っているのはオーガニック・コットン。自分が作って売っているものを、かみさんとこどもに、自信をもって飲ませられるか、というのを彼の製品基準にしている。
スピリチュアリティとビジネスという、このまったく正反対に見えるかもしれない価値、哲学を、日常も越えて、ビジネスにまで活かそうとするひとは、そう多くはない。表面的に応用するのではないから、どんな業種であろうと(たとえば不動産業でも)応用はできる。スピリチュアリティは価値観であり、哲学であり、世界のとらえ方であるから、当てはまらないものがないが、「哲学としてビジネスに応用する」というところが、ちょっと分かりにくいかもしれない。経営者の生き方と会社がアライン(整合)している。しかし、これからの時代には、このモデルが頻繁に出てくるはずだ。そしてそれは、マーケティング的にも正しい。少数の先鋭的な経営者、時代に敏感な経営者は、このことを直感的に正しいと感じるかもしれない。時代が動いている。ガラガラと音をたてながら、少しずつ。でも確実にスピリチュアリティの方向に。
メイさんのように、志が高く、しかも現実対応力も高いひとが、スピリチュアルなモデルを現実的に成立させられるのだろう。彼はいい製品をつくることに時間と労力はしこたま使ったが、販売はただ待っていただけだ。オーダーは彼のもとに殺到したが、決して売りに行ったりしていない。スピリチュアルな志がひとを結集させ、製品は自然に拡がっていった。スピリチュアリティは、とてもプラクティカルな哲学だと、わたしは思うのだ。

(ミッチェル・メイさんのご本「ミッチェル・メイ・モデル」は、2007年4月20日発売予定です。また、同5月頃にはメイさんも再来日されてビジネス・セミナーをなさる予定もあります)
  喜多見 龍一


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