【2003年11月号】「オンナかッ?」と問うできる精神科医。

2003年 11月号

オンナかッ?」と問う
できる精神科医。


 今月は精神科ルポを。ストレスで軽い不眠になったのをいいことに、実際に精神科に行って受診・投薬を受け、実際に飲んでみる。不眠には、肥満が原因の睡眠時無呼吸症とストレスからのものがある。後者の守備範囲は、精神科/心療内科/神経科だ。東京港区には小から大型病院まで全28。診療内科や神経科は、なにか、スキー帽をかぶって強盗をはたらくようで嫌いだ。堂々とすっぴんで精神科へ行きたい! わたしは精神科ははじめてだが、風邪ひいて内科に行くのとまったく同じと思う。だってさ、いずれにしても、みんなどっかしら、ちょっとずつおかしいんだから。それが精神だって、オヤシラズだって、盲腸だって、たいした違いじゃない。
平日午前、診療室前まで行き着くと、スゲーッ!! お客さん、じゃなかった患者さんが鈴なり。座るイスなく立ってる人も。単に近いから来たここ国立系大型総合病院Tは、精神科の診療室は全部で4室だか6室だかあって、まったく豪華絢爛たる充実ぶり。病室前で1時間待つ。その間に10人以上が部屋へ。ひとりの患者の平均診療室滞留時間は3〜5分! エッ、それじゃあお悩み聴いてもらえないじゃない! ひとり30分はと思っていたが、さにあらず。部屋数と滞留時間から暗算すると一日に500 人くらい来る患者をさばくためと、医者が疲れちゃうのと、投薬中心治療のためか。来ているのは「母親に連れられた娘」(必ず娘さんが患者。「母源病」のケースもあるかなあ)「50歳前後の夫に付き添われた患者妻。またはその逆」「20代の若い男女」などが多い。
後に「できる先生」とわかる、おじいちゃんK先生に呼ばれる。『眠れないんですう』「鬱?」『いいえ』「オンナかッ?」(誤解しないように。この医師は優秀です。この突飛なというか、本音のというか、心をワシづかみする質問は、この医師の場数と本質をつかみとる力をあらわす)『いやそうじゃなくてえ・・・。先生は精神科医ですね?』「本もいっぱい書いた。食い物の本と日本を憂える本とか・・・。わたしはあのノーベル文学賞作家Kの主治医だったんだ」『うへー、そうなんですか。自殺ですよね、K』「そうだ、電気毛布の電磁波で鬱になっちゃったんだな(K医師の理論ではPCもゲーム機もいかん。ほんとに鬱多いし)」『・・・』「精神安定剤も2つ出すので、先にそっち飲んで、なるべく睡眠薬飲まずにね』てな会話を5分の中でしないとあかんので、段々と患者はメモを用意するように、医師もムダをそぎ落としたキモの単語だけ会話になっていく。牛丼屋で自分の後ろにズラッと客が待ってんのと似ている・・・。
家に帰ってから、どんな変化も見逃すまいぞ、とクスリを飲む。「デパス錠」0.5mg (抗不安剤、抗鬱剤)×2/日と「デパケンR 錠」200mg (抗躁剤、てんかん治療薬)×2/日。3日間だけ飲んでみた。身体から「リキみ」が抜けていく感覚。たとえば急いでいても道を走りたくはならない、という状態。アマゾンでK医師の本、正常と異常のはざま的な題名の本を買って読む。おー、この人、結構ええぞお。おぬし、できるな。こんな先生を引き寄せちゃうわたしもすごいじゃんと妙にうれしくなる・・・。
  喜多見 龍一


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