世界は「人間関係」でできている。そして人間関係は「聴くちから」でできている。

聴くちから

1,980円 (税込/本体価格 1,800円) ラベル非表示 - カート有り
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ISBNコード 978-4-89976-090-0
ページ 320
判型 四六判 ハードカバー
著者 マイケル・P・ニコルズ
訳者 佐藤志緒
発行日 2005-11-25

“聴く”ことこそもっとも大切な対人スキル
人はさまざまなコミュニケーション能力を備えています。その中でも特に重要な能力であるのが “聴くちから”です。円滑な人間関係も“聴くちから”次第といっても過言ではないでしょう。人間関係がうまくいっている人、ビジネスが順調な人、家庭が円満な人は、実は“聴くちから”を持っている人でもあるのです。
人は「誰かに話を聴いてほしい。この気持ちをわかってほしい」という欲求を持って生きています。しかし実際はどうでしょう? 相手の立場に立てば、聴いてほしい話をちゃんと聴いてもらえないと悲しくて情けない気持ちになってしまうことはわかっているのに、家庭や職場などで、話の行き違いによるトラブルに巻き込まれ、いわれのない批判を受けたり、思いがけないピンチに立たされてしまっているといったことも、残念ながらそう珍しくないのではないでしょうか。
現代社会は通信環境の急速な進化で、コミュニケーションは便利になりましたが、その反面、直接会話をする時間が減少し、言葉を交わす中で培われる“聴くちから”が急速に失われていると著者は警告します。聴くちからが不足していると、そういうつもりはまったくないのに話を聴いたときの返事や反応などで相手を傷つけたり、怒らせたりしてしまう。“聴くちから”を失うことはコミュニケーショにとって致命的なことであり、それが家族や友人、ビジネスパートナーなど大切な人との距離を遠ざけるという悪循環を繰り返しています。

会話は話し手と聴き手の共同作業
そもそも会話というのは、基本的に二人の人間がいるからこそ成立するものです。「会話の出来・不出来は話し手と聴き手の共同責任である」と考えてもいいでしょう。しかし、不幸なことに、意思の疎通がうまく図れなかった場合、私たちは話し手に問題があると考えがちです。「アイツの話はつまらない」「私は話し下手だ」という具合に。
話が通じないことにいら立ったときは、まずその欲求不満を抑え、一歩引いたところから冷静に状況を見つめなければいけません。そうすれば会話を邪魔する根本原因がしだいにわかってきます。欲求不満は「聴き手のホンネ」として、心の中に潜んでいます。
話がうまく通じない原因は聴き手側の“感情的な反応”にあります。特に苦しみや怒り、怖れの気持ちがかき立てられた場合、聴き手は無意識のうちにその話に耳をふさいでしまうのです。まずその事実に気づきましょう。感情的な反応を抑える方法として、「内なる声」に耳を傾ける方法もあります。感情が高ぶったとき、自分自身に「ちょっと待った」をかける「内なる声」にまず耳を傾けましょう。

“聴くちから”を高めれば、人間関係も改善
本書が目ざすゴールは、「“聴くちから”を高めて、人間関係を改善すること」です。そのためには、まず自分がどのような場合に感情的な反応を示してしまうか、その傾向を見きわめる必要があります。私たちはふだんあまり深く考えずに相手の話を聴き、それに答えてしまっています。それがトラブルの原因になっています。しかし細心の注意を払って相手の話を聴くよう心がければ、話し手は「この人は私の話を大切に聴いてくれている」と気づき、あなたの話にもていねいに耳を傾けてくれるようになります。しかも相手の話を正確に聴きとることができれば、会話することそのものが楽しくなります。また相手から多くのことを学べるため、よりいっそうその人に対する興味も湧いてくるのです。
“聴くちから”をいかに理解し、身につけ、磨き、そして人間関係に役立てていくか、各章ごとに順を追って、豊富な会話の事例を交えながら解説します。自分を理解してほしいという話し手の気持ちを汲み取り、感情的な反応など、誤った話の聴き方をしてきたことを理解し、話し手との共感を高め、感情的な反応を抑え、「聴くちから」を夫婦や親子、友だち、仕事関係者など、身近な人々との交流にぜひ役立ててください。
本書は心理学者である著者が、心理学的視点から“聴くちから”を解説した一般向け心理書です。紹介された会話の事例には、さまざまな年齢(生後まもない赤ちゃんから中高年まで)の、さまざまな職業(学生、ビジネスマン、専業主婦など)の人びとが登場する。著者は彼らの抱える悩み(恋愛、結婚、受験など)を本書のテーマに沿ってていねいに描写し、「読み物」としても楽しめる内容です。

<各章の内容>

  • ●第一部 誰もが「自分を理解してほしい」と願っている
    • 【第一章 なぜ「話を聴くこと」がそれほど重要なのか?】
      自分の話をちゃんと聴いてもらえないと、人は誰でも傷ついてしまうものです。特に、その相手があなたにとって特別な存在の人(恋人や伴侶、親友など)だった場合は、みじめで悲しい気分に陥ってしまいます。この章では、さまざまなケース・スタディをもとに、“聴くちから”のもつ重要性を紹介します。
    • 【第二章 「話を聴くこと」が自我に及ぼす影響とは?】
      特に幼少期の子供は、話を聴いてもらうことによって自尊心を高めていきます。あなたは“親”として、きちんと我が子の話に耳を傾けていますか? またあなたの親はあなたに対してどうだったでしょう? この章では、子供の成長を4段階(生後2ヶ月まで/3ヶ月から6ヶ月まで/7ヶ月から14ヶ月まで/15ヶ月から18ヶ月まで)に分け、親の“聴くちから”が彼らに及ぼす影響を解説します。
    • 【第三章 会話のすれ違いはなぜ起きてしまうのか?】
      その気はあるのに、なぜか他人の話をうまく聴けない人がいます。これは彼らが実際より自分を「聴き上手だ」と考えていたり、「他人の話を聴くなんて、誰にでもできることだ」などと考えているからです。この章では、そういう人びとが陥りがちなものの考え方、聴き方の傾向について詳しく紹介します。
  • ●第二部 話をきちんと聴けない本当の理由とは?
    • 【第四章 私たちは自分の欲求を抑えられない】
      会話には「傾聴」が不可欠です。「傾聴」とは、ふたりの間に“共感”という橋を架ける作業です。そのためには、聴き手が自分の欲求を一時的に抑え、真の意味で話し手の立場に立って話を聴いてあげなければいけません。でも実のところ、この「自分の欲求を一時的に抑える」という作業はむずかしく、容易には実践できないものです。この章では、日頃よくある会話のシチュエーションを例にとり、この「自分の欲求を抑える」ことの意味を説明します。
    • 【第五章 私たちは偏った話の聴き方をしている】
      聴き手の心の中に、少しでも話し手に対する偏見があると、それだけで会話は真実とは異なる方向へ流れていってしまいがちです。この章では、さまざまなケース・スタディを例にとり、「心の中の“偏見”」が及ぼす弊害を見ていきます。
    • 【第六章 私たちはすぐ感情的な反応を示してしまう】
      あなたは相手から何か話を聴くと、まるでテレビ・タレントのように大げさな反応を示してはいませんか? またそうすることが“聴くちから”だ、と勘違いしてはいませんか? 話が噛み合わない原因は、この“過剰反応”であることも多いのです。この章では、私たちが他人の話に過剰反応してしまう心理を徹底的に分析します。
  • ●第三部「聴くちから」を高めよう
    • 【第七章 話を聴くときの基本スキル】
      この章では、実際に相手の話を効率よく聴きとるための技術(効果的な間の置き方/相手の話をさらに引き出す質問の仕方/相手を怒らせない話のさえぎり方など)を具体的に紹介します。
    • 【第八章 「共感」を高め、心を開くためのノウハウ】
      相手と親しい間柄になればなるほど、人はとかく「何も言わなくても私にはわかっているから」という態度をとってしまいがちです。でも、それでは真の意味の「コミュニケーション」とは言えません。この章ではそんな事態を避けるために役立つ、「相手との共感を深めるような話の聴き方」を紹介します。
    • 【第九章 感情的な反応を抑える秘訣】
      誰かから話を聴いたら、過剰な反応をせずにはいられない——この章では、そんな欲求を抑えるための秘訣を紹介します。また相手の怒りを買ってしまった場合の対処法や、自分の感情を抑えてはいけない例外的なケースについても説明します。
  • ●第四部 「聴くちから」を使い、身近な人々と交流しよう
    • 【第十章 夫婦間の会話】
      この章では、恋人、夫婦間の話の聴き方の注意点を紹介します。ひとたび恋愛関係になると、男性はひとりになりたがり、女性はふたりになりたがる傾向が見られます。私たちは親しい異性の話を聴くとき、この男女間の心理のギャップを、どう埋めればよいかがわかります。恋人時代、婚約時、新婚時代、新婚時代以降の4段階で解説。
    • 【第十一章 親子間の会話】
      この章では、主に親子間の話の聴き方の注意点を紹介します。親が子供の話を聴く場合、そこにはどうしても「支配しなければ」「干渉したい」という気持ちがはたらいてしまうものです。その欲求を抑え、子供たちとわかり合うためにはどうすればよいかがわかります。
    • 【第十二章 友だちとの会話、オフィスでの会話】
      この章では、友人、同僚間の話の聴き方の注意点を紹介します。オフィスで上司が話を聴いてくれないとき、悩んでいる様子の部下に話を聴きたいとき、また友人に建設的な批判を聴いてほしいとき——そんなとき、私たちはどう対処すればよいかがわかります。
    ◆話がうまく通じない原因は「聴き手側の感情的な反応」にある。
  • ◆話し手の発言の裏にある「言葉にできない感情」を聴きとることの重要性。
  • ◆話を聴いてもらうことで、ひとは自尊心を高められる。
  • ◆思い込みが、あなたの聴くちからを低下させる。
  • ◆相手を支配したい、という気持ちがないか自分を見てみる。
  • ◆自分の問題で手いっぱいのときは、ひとの話は聴けない。
  • ◆「共感力」が聴くちからを左右する。
  • ◆有能なマネージャーは、必ず、よい聴き手である。
  • ◆こどもと、夫と、妻と、親と、上司と、部下と関わるときの聴くちからを飛躍的に高める具体例を豊富に収録。