人生を自ら導き、変容させる『言葉』と『無意識』の真の威力

NLP―神経言語プログラミング
米国NLP協会理事長
クリスティーナ・ホール博士 インタビュー

クリスティーナ・ホール博士

NLPができた翌年の1977年からNLP中心的創始者リチャード・バンドラーと共にNLPトレーニングを開始。彼の共同開発者である。サブモダリティー、時制言語パターンやマウスパターンなどのNLPの重要な発展に貢献し、時制や言語パターンに関するワークでは権威的存在。1983年より、バンドラーとグリンダーによって設立されたNLP認定機関・米国NLP協会(The Society of NLP)の理事長をつとめる。アメリカをはじめ、カナダ、イギリス、フランスなど世界13カ国でNLPを教える世界的トレーナー。特にトレーナーズトレーニング『芸術としてのトレーニング』は、彼女が探求し続けたNLPの集大成として大きな指示を受けている。

『心の状態を瞬時にして方向付けるNLP』、その背景には何があるのか。そもそもコミュニケーションスキルと謳われるNLPとはいったい何か?米国NLP協会理事長であり、また言語学者として、NLP(神経言語プログラミング)の背後に潜む『言葉の威力』に対する造詣がもっとも深いクリスティーナ・ホール博士に、自身のトレーニングに込めた想いも含め、特別にお話しをうかがいました。

*NLPとは無限の可能性を持つツール

−−最近日本でもよく知られるようになったNLPですが、あらためて「NLPとは何か」、「NLPによってどんなことが可能なのか」をはじめに聞かせてください。

クリスティーナ:「NLPとは何か」というのは、以前からとても大きな問いでした。人によっていろいろな見方があると思いますが、表面的なレベルで言うとNLPは脳の使い方のテクニックと言えます。より深いレベルでとらえるならば、NLPとは自分の人生を積極的に生き、自分自身と他の人の人生に影響を与え、豊かにしていくための決断、選択をしていくことだと思います。
このNLPで使われているテクニックのすべては、考えられたもの、もしくは発見されたものです。そして自分自身で積極的に人生に影響を与えること、それがテクニックの目的です。私は心理学者として、またトレーナーとしての経験からも言えるのですが、人々が自分の問題を語るとき、必ずその背後には何かに制限されている。枠の中に入っているわけです。「CAN’T−出来ない」という認識が常にあるのです。もちろんそれは無意識に進行しています。結果として人生や自分自身に対して受動的な考え方、受動的な姿勢を取ってしまう。
すべてのテクニックの目的は、その人を受動的な姿勢から再び積極的な、自分から行動を起こすという姿勢に戻していくことです。私自身が積極的に人生をつくっているんだという認識、それが非常に大事なところですし、それこそがNLPと言えるでしょう。

−−NLPというのは完成形ではなく、今この瞬間も発展しているのですか?

NLP

クリスティーナ:そうです。NLPはいつも変わりゆく、常に流れている、ダイナミックなプロセスです。人間は言葉を使って、その世界を固定されたもの、止まったものにしてしまいます。しかし言葉によって何かを定義すると、その瞬間に制限となるのです。最大の制限は「自分はもうこれは知っている」と思うことです。「分かった」という瞬間に制限されてしまいます。
NLPは地図であって、実際の土地ではないということを忘れないでください。実際の土地自体は動いているし、変化し続けています。言葉自体もひとつの見方(地図)にすぎません。多くの人は、NLPに対してたったひとつの真理を求め、知りたいと思っているようです。しかしそうではないのです。今後もさまざまな発見があると思います。かつて私がバンドラー氏、グリンダー氏と行動を共にしていたときよくセミナー中に「NLPとは何か」と人に聞かれたものです。その時、彼らは腕を組んで「分からない、まだ探しているんだ」と答えていました。NLPとはそれくらい無限の発見が常にあるようなプロセスなのです。

*「ことば」と「芸術としてのトレーニング」に秘められた想い

−−なぜNLPはそんなにパワフルなのでしょうか?

クリスティーナ:私たちは言葉というツールを使って、様ざまな体験を作っていきます。NLPは言葉の持つパワーとどんな質の体験を創りたいかということにフォーカスします。多くの人が言葉の持つパワーというのは分かっていても、言葉がどれほどに力を持っているかということまでは気付いていないような気がします。
「ウェル・フォームド・アウトカム」というNLPの用語があるのですが、それはどんな変化でも、どんな結果でも、自分自身で起こすことができるという意味です。今は物事に反応としていくという受動的な生き方をしている人でも、自分で人生を創造していくことはできるのです。誰にでも可能なのです。

−−NLPトレーナーズトレーニング(芸術としてのトレーニング)を開催されてらっしゃいます。トレーニングを通して参加者の方にどのようなことを伝えたいと思っていますか?

NLP

クリスティーナ:繰り返しになりますが、NLPのトレーニングに来る前、参加者の多くは人生には選択の余地がないように感じています。誰かが「私にはこういう問題がある」と問題を話すときは、その背後には必ず制限された思考があります。それによって人生、そして自分自身に対して非常に受動的な姿勢を取っているのです。
NLPを学んでいくと積極的に自分の人生を創造していくことができるようになります。私のトレーナーズトレーニングを受講した後に、参加者の方からフィードバックをいただくのですが、多くの方が「これを受けて、本当に自分の可能性が開けてきた」「今まで想像もできなかったようなことが行動に移せるようになった」と報告してくれます。NLPは人の持っている可能性を行動に移せるようにしてくれます。夢をかなえるためのツールとも言えるでしょう。
私たちは自分自身の人生、そして他の人の人生にポジティブな影響を与える力を持っているということを伝えたいのです。私は人が大好きで、人の持つ可能性を信じています。ですからトレーナーズトレーニングの中でもそれぞれの人の持つ無限の可能性を引き出せたらと思っています。

*真のトレーナーに求められること

−−ここ2〜3年の間に日本でもNLPのトレーナーが急増してきましたが、トレーナーの質が一定していないという声も聞かれます。クリスティーナさんのトレーニングコースでは、何を重視していますか? またトレーナーに対する期待などがあれば教えてください。

クリスティーナ:トレーナーで大切にしている三つの要素があります。ひとつ目はシステムシンカー、つまりすべてをシステムレベルで考える人になってほしいということ。個人ではなくて、より大きなシステム、つまりコミュニティーやグローバルな地球の家族の一員として考えてもらいたいのです。人と関わるときも同じで、誰かとワークするときには、その人のひとつの側面だけではなく、その人全体と関わるように意識を向けましょう。
ふたつ目は人を尊重するということ。私たち一人ひとりはユニークな存在であることに気づいてください。人が持っている可能性を最大限に引き出すような方法で相手と交流することが大切です。自分が目立つということではなく、奉仕の精神で仕事をしていくことがトレーナーには求められます。
三つ目は、人にテクニックを教えるのではなく、人生の質を向上させる方法を教えているという見方を持つということです。マインドではなくハートから人に接していくこと、本当の意味での人間愛、人を大切にする気持ちを持っているかということが大事です。 トレーニングのいろいろなスキルというのは教えていくにつれ、どんどんうまくなっていきます。一番大事なのは、無条件の愛と尊敬を持って人に接するということです。無条件の愛というのは、一番教えるのが難しいテーマですが、これこそが最もパワフルな影響力を持つと思います。

*トレーナーの姿勢によって、テクニックも生かされる

−−教える際に一番大切にされているのは、無条件の愛を持って人と接することなんて素晴らしいですね。トレーナーの価値が高いと、テクニックも価値あるものになるのですね。

クリスティーナ:人にトレーニングを提供するというのは、とても大事で、責任のある仕事だと思っています。というのは人の脳に対してだけではなく、人生全体に対してワークを行うのですから。脳は体に影響を与え、他の人との交流の仕方にも影響を与えます。すべてをひとつのシステムとして考えることが重要です。
NLPが成長していくにつれ、テクニックとしてのNLPというところに重点が置かれてしまい、テクニックを知っているトレーナーがすぐに教え始めるということが起こりました。もしNLPを単なるテクニックとして思っていたら、そのレベルでしか教えられませんし、NLPとは人に対してテクニカル的なことを施すものと考えるでしょう。しかしそうではなく、NLPは参加者と共に行うプロセスなのです。NLPのスキル自体は中立で、いいものでも悪いものでもありません。食事に使うフォークと同じように、食べるために使うこともできるし、人を傷つけることもできるものです。テクニックは、トレーナーの姿勢や価値観と非常に関連しています。トレーナーにとって一番大事なのは、何のために行うのか、どんな影響を与えたいかを常に意識していることです。そうしたことを意識できるようになると、より深いレベルの経験ができるようになるでしょう。

−−クリスティーナさんのトレーナーズトレーニングの受講者はトレーニングで学んだことを反映させてコースを行っていくのでしょうね。

クリスティーナ:まったく同じ教え方というのはできませんよね。トレーナーの方には私の教えたことを統合し、自分のものにしてほしいと思います。トレーナーになるための基準は、本当に大事な役割だからこそ設けています。基準というのはあくまでも最低限のものです。
トレーナーとして教えていくことは、生徒に大きな影響を与えます。生徒がトレーナーになったら、さらに次の人に影響を与えていく。その場だけでなく、自分の与えているものがずっと永遠に影響していくということを忘れないでほしいと思います。ですからトレーニングでは、価値観についても重点的に話し合います。

−−今回NLPについて本を書かれ、出版されるそうですね。本に対する想いをお聞かせください。

クリスティーナ: NLPを使うことによって、本当に人生を変えられるということを伝えたいと思っています。以前から何人かの友人に「あなたが学んだことを誰にも伝えずにこのまま死んでしまうのはもったいない」と自分自身の体験について本を書くように言われていました。
私自身言葉を変えることで、考え方、選択の仕方、モチベーション、そして学習プロセスにおいて驚くべき影響があって、私の人生は劇的に変わりました。この本を通して、人は言葉を使って自分の意識、そして人生の行動、最終的には他の人々に影響を与えられるということに気づいてもらえたらうれしく思います。

−−最後にこれからNLPを学ぼうと思っている日本の読者、そしてトレーナーコースに対してメッセージをいただけますか?

クリスティーナ:NLPを学ぶにはある程度の時間が必要ですが、自分を信じれば、偉大なる力があなたをサポートしてくれるでしょう。自分に対する内なる信頼を置くというのは大切な学びです。大人はよく、一気にすべてを学びたがるのですが、学びのプロセスは一個一個積み上げていくものです。ですから忍耐力を持って、自分を信じて、そして人生の旅を楽しんでください。これは本当に素晴らしい旅なのですから。

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