人生を自ら導き、変容させる『言葉』と『無意識』の真の威力

前世療法×インナーチャイルド
トリシア・カエタノ インタビュー

ふたつの手法でのアプローチで、時を超え、魂に語りかけ、今世に誕生した意味、自分を取り巻く人々との関係を深く理解することをサポートし、自己を探求してくれるトリシアさんのワーク。毎年、日本で12日間のセラピストのための養成講座を開催されるトリシアさんに、前世療法、インナーチャイルドワークなどについて、基本的なところからお話を伺いしました。

今世の体験により呼び覚まされる過去世の体験

−−前世療法は、何のためにそれをやるのか、という基本的な質問ですけれど、何かセッションの実例を教えていただけますか?

トリシア:例えば、恐怖症には非常に有効です。

−−恐怖症ですか?

トリシア:ええ。例えばあるクライアントの女性がクモ恐怖症で私の元へやって来ました。セッションでは彼女はインドの6歳の男の子に戻りました。彼は森の中で遊んでいた時に、木の根っこの下にあった穴に落ちてしまい、あまりの恐怖で助けを呼ぶこともできず、結局はその穴の中で餓死してしまったのです。クモが怖いのもうなずけますよね。そして、さらに今世です。彼女がまだ赤ん坊で揺りかごの中にいるときに、1匹のクモが揺りかごの中に入ってきたのです。そのことは彼女にとってはOKだったのですが、それを見た母親がひどく叫んでしまったのです。その悲鳴が女の子を怖がらせ、悲鳴と恐れとクモが全部ひとつになって、過去のエネルギーをどんと崩壊してしまった・・・ということです。 非常に興味深いのは、そのときのトリガーになったものはクモではなくて、そのときの母親の悲鳴だったわけですね。悲鳴と恐れがちょうどその彼女の過去世の彼が感じた恐怖と同じだったということです。

−−過去世に退行するということは生と生の間の中間世に戻ることもできると思うのですが、そこをプロセスすることによって人生の目的を知るということは可能でしょうか?

トリシア:そのようなときには、ポジティブな死を迎えた過去世にその人を誘導します。そうすると死んだ後かなり高次元に行くことができるので、そういったワークが行いやすくなるからです。 そして、死を越えて中間世、そして次にやってくる転生で何をしたいかと決めるところまで誘導して、その場所で今世のフォーカスを見つけることができます。そういう適切な場所に連れていく手法というのはトレーニングで教えていきます。

過去世での誓いが今世の人間関係を左右する

−−人間関係についてのワークというのも多いですね?

トリシア:はい、興味深い例があります。ある女性ですが、離婚してもう7年もたっているのに、まだ前のご主人が彼女に電話をしてはいろいろなことを頼んでくるのですね。この状況はどこかおかしいんじゃないかと、彼女は私のところにやってきました。
そこで、彼女が退行したのは1700年代。彼女は、とてもお金持ちのわがままな娘で、婚約者がいました。ある日、ふたりは馬で遠出をしますが、だんだん日が暮れてきます。婚約者が「もう帰ろう」と言ったのに、彼女は「嫌よ」と言い、家とは反対の方向に馬を進め、そこで彼は仕方がなく彼女に付いていきます。ところが、3人の強盗が待ち伏せをしていて、彼女たちを襲いました。彼女を護ろうと彼は戦い、そして殺されてしまうのですね。彼女は血を流し倒れている彼の肉体を抱きしめ「生きて、生きて!あなたの言うことは何でも聞くから、あなたの面倒を見るわ、決してあなたの言うことにもう反対はしないわ」と叫びました。でも、彼は死んでしまったのです。
そこで今世、彼女は男性に出会います。それが前のご主人で、亡くなった婚約者の魂だったわけです。

−−それじゃあ、過去に彼女の言った言葉が、今世にまで影響しているのですか?

トリシア:そういうことです。このように特に人間関係の問題で来ている方に関しては、特にその転生における誓いを探します。感情の入った誓いの言葉というのがそのエネルギーを閉じ込めてしまうのです。トレーニングのときにはそういう人間関係を癒すための退行とか、それから中間世に行くためにはどうしたらいいかとかという、そういういろいろな情報は差し上げて教えます。

−−恐怖症や人間関係の問題とはまた別に、何か問題があるというわけではなく、さらに拡大したいとか、成長したいといったポジティブな変化を起こすということについては、このセラピーは有効なんでしょうか?

トリシア:より拡大するということですね。このセラピーでは、いつでも自分を自由にする、自分を拡大する方向に向かいます。制限された反応パターンに閉じ込められていたら、結局は拡大したり、大きくなったりはできません。この手法を多くのビジネスマンや社長、ビジネスオーナーたちに教えました。だから、何もトラウマを解放するためのものではなくて、ともかくより拡大していくというための方法です。

今世での体験が過去世でのトラウマの体験を開く

−−例えば、今世での問題があって、そのことと過去世の起きたトラウマというのは、何か密接に関係しているというケースもあるんでしょうか?

トリシア:ある種のトラウマというのは同じディスクに記録されています。つまり今世で、例えば頭をガンとぶつけたとします。そうすると、もし右側をぶつけた場合、それが今までのすべての右側をぶつけた、あるいは殴られた体験というものを開きます。
例えば、それが3,000年前に、戦いか何かで殴られたときに感じた感情だとしても、それから今世、3歳のときに、ブランコから落ちたときに感じた感情だとしても、今の何かしらの体験によって開かれるわけです。そうすると、3,000年前と3歳と今の感情というのは全部この場所に、言ってみたら垂直にあるということです。

−−興味深い話ですね。他にも過去世とインナーチャイルドワークが結び付けられるのには、別の形がありますか?

トリシア:例えば、今世の直前の過去世が非常にトラウマに満ちたものであると、生まれたときからもうその過去世のトラウマを今世に持ち越してしまっています。つまり過去世のトラウマを持ち越してきた人が、今世において例えば車の事故とか、階段から落ちたりとか、親から殴られたり、いじめを受けたりとかという、そういう体験をすると、その同じディスクの感情というものが引き金になって、過去世が全部今世に思い出されてしまうということがあります。そうなると、今世の何がトリガーとなってそういう過去世のトラウマのエネルギーが今世になだれ込んできたのかということを知る必要があります。

−−トリガーを見つけることですね。

トリシア:ところが問題は、そのカプセルに閉じ込められたエネルギーというのは、タイムトラックという道の上に置いてあって、そして同じような出来事があったときにいつでも爆発OKの状態で待っているということです。
だから、もし今、それに対する刺激があると。そうすると、サバイバルのためのメッセージというのは表面にバッと出てきて、そして過去が現在という時間に向かって崩壊してきます。そして、その刺激に対して反応していくんです。なぜなら、それはサバイバルに関連することなので、もうほかの選択肢がないという状態に、ただ反応していきます。

−−こわいですね。

トリシア:ですから、このワークというのは、すべて変化を起こして自由を獲得するというワークなんですね。私がこのワークから体験したことというのは、過去の出来事の初めに戻って、そしてそれを再体験することによって、カプセルに入ったそのエネルギーを壊して抜くことができるということです。それが退行療法ですね。それは過去世に限らず、インナーチャイルドに限らず、ただその出来事に退行して、退行しただけだったらエネルギーが爆発しただけでそのままになってしまうので、その後にヒーリングの手法というのを使います。だからセッションは、まずは面談から始まります。それから、ブリッジと呼ばれる、過去に移行するブリッジですね。橋渡し。それから、実際に出来事をプロセスする、プロセスの段階。それから、ヒーリングの段階。そして最後は、終了というふうに呼びますけれども、認知できる段階と、5つに分かれます。

−−カエタノさんのいわゆる前世療法は、インナーチャイルドと組み合わせる統合セラピーとおっしゃっていましたけど、どうしてそこに行き着いたのでしょう。

トリシア:私たちというのは多次元的な存在です。そして、いろいろな側面がありますから、たったひとつのことで全部が癒されるということはないのですね。でも、これは私は実際にワークを通して発見しました。例えば、クライアントさんを相手に前世療法をやっていたら、突然その人が自分でポンッと今世の子ども時代に行ってしまった。その後で調べてみると、その過去世と今世とが非常に似たような出来事を体験していたということです。

インナーチャイルドワークにおける許しへの旅

−−基本的なヒーリングが起きるメカニズムというのは、インナーチャイルドの場合は基本的にその対象になる人を許していくというのが基本コンセプトになるわけでしょうか?

トリシア:最近、結構人工的な感じをつくって、許しのワークなんかで「あなたはこの人を許さねばならない」というような方法が行われています。でも、それはまったくそれは間違った方向性だと私は思います。許しというのは、本当に内側から出てくるものであって、誰かに「許さねばならない」と言われてできるものではありません。その人のガッツですね。ガッツとパワーとハートから生まれた許しでなければ、結局誰かの言うことを聞いているだけということになります。
 本当にその人がトラウマを癒せた場合、それは過去を解放することで、私から言えば過去を解放することが、その許しになるということです。例えば、私の母が幼い私を虐待したとします。成長し、私が彼女を見るたびに、何かにつけ古い行動パターン、古い気持ちは同じように感じるでしょう。ワークショップで「じゃあ、はい、お母さんを許しなさい」「はい、許します」なんていうことは絶対うまくいきません。
 でも、インナーチャイルドワークを使って自分自身を癒せば、違うのです。そうすると今の母を見て、ああ、もうこの人は68歳の老女で、私は45歳の女性。じゃあ、コミュニケーションを取って、うまくやっていこうと自然と思えるようになるのです。

−−自分も癒すことにより、その関係性を中立に戻すということですか?

トリシア:そうです。そうでないと、それは人工的だし、継続しません。たぶん、許したと思っても2週間後にまた同じ行動パターンにはまってしまいます。

−−クライアントで、私は過去世を信じていないという人が来た場合はどうするのですか?

トリシア:ほかの8個ぐらいの方法をします。私自身が別に過去世だろうが何だろうが気にしないです。例えば、クライアントさんが見たものが過去世ではなくて、原型的なインプリントだったり、人間の集合意識の断片だったり、あるいは単なる例えとしての物語だったとしても、私のフォーカスというのは、その人の問題が癒される、その人を助けるということなので、過去世じゃなくてもいいんです。
 これが大事です。私はこれを方法としてとらえています。これは信念ではない。だから、ほかの方が何を信じようと、私が何を信じようと、それは自由なんだけれども、この退行療法というのはツールだということです。そして一番大切なのは、それは実際に効果があるということです。そのことにしか私には関係ないのです。

トリシア・カエタノ

米カルフォルニア州在住のアメリカ人セラピスト。カール・ロジャースのもとでセラピーを学び、交流分析、サイシンセシス、ゲシュタルトセラピーなど幅広い活動研究を行う。統合退行療法の開拓者として国際的に知られており、6ヶ国にて医療関係者や心理療法家にセラピーを教える。

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