ADD/ADHDという才能

1,980円 (税込/本体価格 1,800円) 絶版
ISBNコード 4899760582
著者 トム・ハートマン
訳者 片山奈緒美
発行日 2003-07-01



自然の恵みで上手に生きる「狩猟民(ハンター)」。自然や資源を浪費する現代型「農耕民(ファーマー)」。ADD/ADHD(注意欠陥障害/注意欠陥多動性障害)は、障害というより、ハンターとしての稀少な遺伝子を受け継いだひとつの「才能」なのではないか!?

「ウエティコ−神の目を見よ」で、自然と共生するアボリジニやネイティブアメリカンの部族社会を成熟文化(ハンター/狩猟民)と呼び、自然や資源を浪費する我々先進国の文明社会を非成熟文化(ウエティコ=ファーマー/農耕民)と呼び、世界に衝撃を与えたジャーナリスト、トム・ハートマン。ADHDの子供の親という立場から、当事者やその家族をサポートしてきた人でもあります。ハートマンはADD/ADHDという「能力」を持つ人々の存在について考察する中で、全人類が成熟文化の中で生きていたハンター時代の遺伝子に理由を求め、ADD/ADHDをポジティブな側面から語ります。

自然の恵みに食料を得る狩猟・採集生活では、常に周囲の状況に注意を払い、獲物を見つけたらすぐに追いかける行動力が重要でした。しかし自然を管理・活用して食料を生産する農耕・牧畜生活ではそれらの能力は多動・衝動性となってしまい、ハンターは計画・集団行動に長けたファーマーに征服・駆逐され、少数派になっていったとしています。

しかし、ハンターが現代のファーマー社会に適応していないかというと事実はまったく反対で、サラリーマンや公務員の大半がファーマーであるのに対し、警察官や探偵、作家などでは、多くのハンターが能力を発揮しています。直感やひらめきにすぐれたADD/ADHDには天才や政治家、起業家も多いのです。アメリカやオーストラリアなど移民の国にADD/ADHDが多いといわれるのも、その冒険心と好奇心、故かもしれません。ハートマンは全体的には少数派であっても、それを異質なものとして見るのではなく、それぞれの特質を生かして共存していく方法を模索すれば、十分に共存できるし、世の中ももっとおもしろくなると語っています。

個々の特性からADD/ADHDの人をハンター(狩猟民)、「普通」の人をファーマー(農耕民)と例えて考えると両者の違いがわかりやすくなるところがおもしろく、希少な遺伝子と能力を受け継いだ人々という新しいADD/ADHD像が見えてきます。エジソンやケネディなど有名なハンターたちの事例も豊富。当事者・非当事者関係なく読んで楽しく参考になる本です。


※ウエティコ…ネイティブアメリカンの言葉で「人喰い」という意味。まさに自身の繁栄のために他者の殺戮と収奪を繰り返してきた人類そのものである。