うつで人は豊かになる
ISBNコード | 978-4-89976-111-2 |
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ページ | 320 |
判型 | 四六判 ハード |
著者 | 生井隆明 |
発行日 | 2007-04-26 |
うつは確実に、私たちに「成長」をうながす。
25年間、ストレス・セラピストとして「うつ」と関わってきた専門家が実にユニークな実践的手法で実現した、うつからの驚くべき回復を詳細にレポート。 「どうしたらいいのか?」に徹底して応えた本。
(1)今までの生活のストレス(うつの原因)を認識させて別の道をさぐる。
[根本的には今までの自分の生き方のパターンに気づくことが大切]
(2)うつクライアントの身体をときに強く、ときに優しくマッサージする。
[身体の感覚への刺激を取り戻す/体感覚と言葉の一致「痛いッ/気持ちいーッ」]
(3)地下鉄駅や寺社の階段を二人で昇り降り。またはウォーキング。
[善玉ストレス(肉体的負荷)で、悪玉ストレスを溶かしていくプロセス]
(4)大きな声で歌う。
[声を出すことのチカラ。呼吸のチカラ]
(5)必須栄養素に配慮した栄養療法を指導する。
[食が細りがちなうつ。体力と気力を取り戻す栄養内容が大切]
(6)起きる、食べる、寝るの生活リズムを取り戻す。
[リズムの乱れが、うつの直接的な原因のひとつ]
【概要】
現代ほど「うつ」に悩まされやすい時代はなかったのでは? 真面目で律義な日本人には昔から「うつ」が多いと言われており、最近では3人に1人が「うつ」の傾向にあると指摘されている。 社会が複雑化し、職場や生活の場で機械化が進み、人間関係は希薄になっていく。一方で、長くつづく景気停滞はいまもすべての分野に影を落とし、暮らしそのものもまた沈滞気味である。 こんな時代、「うつ」になるな、というほうが難しいのかもしれない。 25年にわたってストレスを研究し、独自の「ストレス学」を確立してきた本書の著者、生井隆明氏。すでにストレス・セラピストとして、善玉、悪玉ストレス論を確立している。 生井氏は、ストレスから起きる精神・心理的な障害、たとえば「うつ」、統合失調症、自閉症などについて、これまでに3万人以上もの患者の診療にあたり、回復させてきた。 その中でも「うつ」に関しては、多くの症例に接していくうちに、あるパターンに気づいたのである。 それは、苦しいながらも何とか「うつ」を克服し、自分の生き方を取り戻した人たちは、「うつ」になる前の生活には見られなかった輝きを得ているということだ。 家庭を省みなかった企業戦士が仕事と夫婦円満を取り返し、結婚願望の重圧に押し潰されそうになったOLはその呪縛から解放されたがために幸せな結婚を手に入れ、数年にわたる引きこもりをつづけた青年は、自らのライフワーク探しへと目を向けた。 そこから生井氏は確信する。「『うつ』の向こう側にはパラダイスがある」 生井ストレス科学研究所における施療経験、さらにはストレス障害者のリハビリ施設「奥多摩ふれあい農園」での15年間にわたる活動、そうしたフィールドワークの数々が本書の核となり、読者に対して、まったく新しい「うつ」の姿を提示してくれるのである。
【主な内容】
●第一章 「うつ」の現状と認識- 世間に流布する、さまざまな「うつ」についての誤解、勘違いを指摘し、「うつ」の現状を解説していく。 とくに、生井氏は抗鬱剤の功罪を強く説く。「うつ」を弱めるとされるホルモンの分泌を促す薬なのだが、それが本当の意味で「うつ」の解消に役立つのかは疑問であるというのだ。 さらに「うつ」状態にある人をすべて「うつ」病に括ってしまう現代精神医学にも警鐘を鳴らす。夫婦仲が悪くて「うつ」になる、会社が倒産しそうで「うつ」になる、失恋したために「うつ」になる、これらが同一に論じられるはずがない、そういうことである。 それぞれの「うつ」に個性があり表情がある。そのことを理解することから、「うつ」認識はスタートしていく。
●第二章 さまざまな「うつ」- 生井氏は、「うつ」に陥る基本は「快感、安心、満足」という状態が揺らいだときだという。つまり「不快、不安、不満」が支配することで「うつ」が生じる。 その表れ方として、沈滞、倦怠、そして怒りのタイプがあるという。これらは、その人の個性によってその表れ方が異なってくる。 次に、その個性の部分についても生井氏は分析を加える。 情動反応系で四つの型(闘争型、調和型、逃避型、錯乱型)、理知反応系で三つ(闘争型、調和型、逃避型)、錯乱反応系で三つ(闘争型、逃避型、錯乱型)の、合わせて十のタイプを提示する。人はみな、これらの型に当てはまり、その型が示す「うつ」のタイプがあるのだ。
- ●第三章 「うつ」になってしまったら、どうするか?
- 誰もが「うつ」になってもおかしくない時代。それなのに、タイプ別の「うつ」とどう接したらいいのか、細かなマニュアルは存在しない。いまだに「励ますな」「話を聞け」と型どおりの対応が勧められるだけである。 この章では、事細かな「うつ」の人との付き合い方が解説される。あるタイプには良いことも、別のタイプには悪い場合もある。そのことを知っておかなければ、「うつ」そのものを悪化させたり、家庭を崩壊させかねないのだ。
●第四章 「うつ」からの具体的な脱出例- 10人の具体例を挙げ、彼らがいかに「うつ」を克服していったかを説明する。 自殺未遂、引きこもり、性的不能……さまざまな症例を抱えながら、傍からは「病気」として認識されない不幸、それが「うつ」である。 いまもなお「やる気がないから」などの精神論が横行する社会では、「うつ」への風当たりは強いのである。数ヶ月、ときには数年の時間を使い、立ち直ることは可能である。ここに登場する10人とは、明日の私であり、あなたでもある。
【著者との一問一答】
◆本書での生井さんの主張を読んでいますと、現代精神医学における「うつ」への取り扱いに対して、ある種の憤りがあるように感じます。
生井◆私のもとへは、いくつもの病院を回り、けっきょく治らなかった人が流れついてくるんです。ですから、私は「最後に掴まる藁」だと自称してるんですけどね(笑)。一番の下流から上流を眺めますと、実にいろいろなことが分かってくる。カウンセリングの不備、薬漬けの実態などなど。患者の側が、もう少し賢くなる必要があるのでは、という意味も本書にはこめられています。
◆「うつ」は何も特別なものではない、という言い方にも説得力を感じます。
生井◆「うつ」そのものの範囲がとても広い。それを、すべて病気に括ってしまう必要もないし、生活に支障がある「うつ」にしても、十分に回復可能なんです。そのことを理解して欲しかった。
◆最後のほうでも語られてますが、「うつ」は「自分にとっての幸福」を捉え直す、大事なチャンスでもあるのかもしれませんね。
生井◆他人と同じにしていることが幸福ではない。自分なりの幸福観を見つけ、形成することが大事なんです。でも、現在の教育制度、社会の枠組では、なかなか、そのことに思い至りません。ですから、私は「うつ」というのは神様が「おまえ、それでいいのかい」と頭をコツンとやるような、そんな一撃ではないかと思っているんです。そのことで、彼や彼女の人生はがらりと変わるわけですから。
<目次>
プロローグ 世界はストレスに満ちている
第一章 「うつ」の現状と認識
第二章 さまざまな「うつ」
第三章 「うつ」になってしまったら、どうするか?
第四章 「うつ」からの具体的な脱出例
エピローグ