【2011年03月号】「愛の多忙」Dr.パッチ・アダムスの6月来日テーマは、未来の道しるべになるか。「ひとを助けることは、自分を助けること」

先日、今年のパッチ・アダムスの来日ワークショップのテーマを決めるために、パッチにfaxを打っていた。しかし一週間近く、なかなか返事がこない。パッチのスケジュールに詳しい金本さんに聞いてみると、『たぶん、グアテマラか、エルサルバドルにクラウニングに行ってるのでは』と。もうほんとにパッチの家は、あたたまるひまがない。あっちに紛争が起きたといえば、明日はそこへ。こっちで地震があったといえば、すぐに現地へ飛び。ときには一緒に泣き、ときには大丈夫だよと抱きしめ、ときにはキテレツなおもちゃを吹き鳴らし、相手のふところに飛び込んでいく。もう彼の飛行機のマイレージは、航空会社から表彰状をもらえるくらいでしょう。そんな「愛の多忙」のひと、パッチからお返事がきました。相変わらずすっごい達筆。決してワープロとかお使いにならないので、解読に10分はかかりますが・・・。彼のワークショップテーマのダントツ一番「ひとをケアする喜び」(Joy of Caring)に近いんですが、今年は「Helping」(ひとを助けること)という行為は、自然ななりゆきで、Helperに「自己成長」という糧をもたらすんだ、というテーマでおこないます。

パッチの世界に対する基本的な考え方は、ご自身の行動と同じく「私たち一人ひとりが、まわりのひとをケアしていく、助けていく」という考え方にあります。これは、もはや国も地方自治体もチカラがなくなったいまの時代にぴったりのモデルです。時代がぐるっとひとまわりして、パッチが時代の最先端のモデルになってしまった感がある。いま世界のほとんどの先進国にこのモデルが当てはまるでしょう。

年間40兆円の税収(歳入)で220兆円を使っている(歳出)日本。もはや国に私たちをケアするチカラはほとんど残っていない。自分たち自身でまわりのひとを、お互いに助けていく、ケアしていくというモデルに移行せざるをえない。

私たちは、さまざまな先生に世界からおいでいただいていますが、パッチほどその個性が際立っている先生も少ない。かれは、アナログ人間です。深い感情(ひとを動かす温かいもの)と同時に深い知性のひとでもある。そのバランスがすごいな。今という時代はITも拡大しているが、アナログの方向にも深化している。農業とか。そして、人間生きているからには、自分のまわりから温かいもの、もっといえば「愛」を感じる瞬間があってほしい。そうでないと、生きている甲斐がない。

病院ではうまい医師から完璧な治療もしてほしいが、温かいものも感じたい。介護で手際のいいひとにテキパキ手伝ってもほしいが、温かいものも感じたい。そういう時代だというより、人間ってもともとそういうものなんだと思う。そして私たちは、ときおり、そういうアナログな温かさいっぱいのひとに接したほうがいい。だって、私たちは生活の忙しさにかまけて、ついつい、ひとを助けることとか、人肌の温かさとかを忘れがちだから。

私の家のまわりに、他の家の樹木から散った枯れ葉が風に吹かれてやってくる。もちろん、他の家のまわりにも。向かいのおばちゃんが早起きで、自分の家のまわりを朝早くほうきで掃き清めている。しかし、私が住んでいるところの前も、分けへだてなく掃いてくれるのだ。いつ見ても、道はピカピカ。たしかに、どこからが自分の家の前でどこからが「他人」の家の前かは微妙だが、そういうことじゃない。そのおばちゃんは、「相手の家も自分の家も、きれいだったら気分がいいじゃん」と思ってくれているはずだ。先日、私が家の前の道を掃いていたとき、たまたまそのおばちゃんが出てこられたので、「いつもありがとうございます」と申し上げたら、『おー、お前さん知ってのたかい、そーかい』と内心思われたかどうか、フツーに、いえいえ、とおっしゃっていたが。こういうのの拡げたバージョンが、世界のさまざまな場所で起きていったら、世界の国のサービスが低下しようと、新しいモデル、それも今までよりちょっとステキなモデルで世界が無事進行していくだろう。それは、いままでより、経済的には"静かな"生活かもしれないが、人間の幸せの尺度はきわめて不思議にできているのであって、より幸せなモデルになるのかもしれない。

いま皆さんもニュースで見ておわかりのように、世界にあるさまざまな不正、さまざまなウソッパチ、さまざまな独裁、さまざまな計略は、ひとつずつひっくりかえって、世界はよい方向に向かっていくと私は思っています。それがアセンションじゃなくてもぜんぜんかまわない。そんなことより、世界が徐々に1ミリずつ、あるいはガラガラとでも確実に変わっていくことが大切だ。ウソがなくだれもが日々、きょうは昨日より気分がいいなと思って過ごせる社会に切り替わっていくが。そしてそれは今日も起こっている。デモをしない日本人でも、いつかNOを言う日が来るだろう。今年2011年から2014年くらいに至るまでに、世界のモデルは、パッチのモデルにもっと近くなっていくだろう。デジタルでヴァーチャルな拡大はさらに進むだろうが、アナログな温かさを感じられるモデル、ひとがひとをケアし助けていくモデル、そしてそのことで、それが目的でやっているわけではないが自然に、Helperが自己成長という糧を手にするモデルに移り変わっていくと信じたい。

※みんなで誘い合わせて、パッチの温かさに触れに行こう。

2011年6月4日(土)午後1時〜午後5時(東京、両国)

一般の方には「早割」、医療・福祉・セラピー関係の方には「いつもありがとう割引」。
今年より看護学生の方などを意識して「学割」(8,000円!!)などの割引もご用意(当日学生証提示)。
レクチャー+エクササイズ+Q&Aで、日頃お忙しい方も、パッチに優しさと笑顔と元気をもらって帰ってください。
前回満席に付き、「お早めのご予約」をお勧めします。


 >  喜多見龍一の読むワークショップ ウェブ版